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3.インスタントラーメンの歴史

インスタントラーメンは、日本が生み出した独自の食文化で、最初に発明されてから
50年近い歴史の中で、どんどん進化を遂げています。


インスタントラーメンの誕生

インスタントラーメンの誕生の背景

1958(昭和33)年に世界初のインスタントラーメン(即席中華めん)が
誕生しました。インスタントラーメンは、「保存できること」、「調理が簡単なこと」、
価格が適正なこと」、「安全なこと」を目標に開発が進められました。

しかし、開発は当初から順調に進んだわけではなく、めんを長期保存するために
乾燥させる方法や、乾燥させためんを簡単な調理でおいしく食べられるように
する方法がなかなか見つかりませんでした。
そこでヒントになったのが、てんぷらでした。めんをてんぷらのように油で揚げれば、
水分が蒸発し、乾燥できます。

その際、たくさんの小さな穴があくことで、お湯で簡単に戻せることを発見したのです。
「お湯をかけて2分間」とうたう即席めんは、「魔法のラーメン」と呼ばれ、爆発的な
売れ行きを見せました。


インスタントラーメンの進化

スープ別添の登場で一気に多様化

味付けめんタイプがヒットした一方で、生活者の間からインスタントラーメンの味や
品質に対する要望が生まれてきました。それに対応して開発されたのが、
スープ別添えタイプ」です。スープ別添えタイプは1962(昭和37)年に
初めて登場しました。

 スープ別添えタイプは、味付けタイプにくらべて手間がかかるものの、めんやスープに
味わいを深めることができました。また、ほかの具材を加えることも可能になったので、
とりわけ都市部の主婦たちに好感を得ることができ、発売と同時に爆発的な
売れ行きをみせました。
 このことは、新しい流れとなって、焼きそば、タンメン、ワンタンめん、和風めんと、
めざましい多様化をみせていきます。


ノンフライめんの登場

 1960年代後半、各メーカーは高品質化をキーワードに商品開発を進め、
やがてノンフライめん(非油揚げめん)を誕生させます。
油で揚げずに、熱風で乾燥させためんは、食感が生めんに近く、スープの
風味を生かすなどの利点をもっていました。
 
 1962(昭和37)年、初めてノンフライめんが登場。油脂分の旨味を補うため、
ラード、胡麻、オリーブ油などを成分とする「液体スープ」の小袋が添付されて
いました。

 1968年(昭和43年)以降、続々とノンフライめんが登場し、ノンフライめんブームと
なりました。ノンフライめんの登場は、乾燥技術の開発だけではなく、液体スープの
開発やそれを包装する包材や装置の開発にもつながりました。



インスタントラーメンが半世紀も愛されている理由

 即席めんの消費量は52.5億食、世界では実に936億食以上と、いまや世界的な
食品として認められるようになり、これからもこの傾向は続くとみられています。
このことは、発売当初から高度経済成長期を経て現在に至るまで、即席めん類が
消費者の生活ニーズにきめ細かく対応し、次に揚げるような、他の食品にはない
数々の優れた特性を備えているからです。

1.家庭では容易にまねのできないめん質とスープの味わいなどを備え、
これらのおいしさが消費者の嗜好にマッチしている。

2.しょうゆ、みそ、塩、とんこつ、それらのミックス多種多様な具材など、いろいろな
味付けが可能で、豊富なバリエーションの商品展開が支持されている。

3.いつでも誰でも手軽に調理でき、現代人の生活パターンにマッチしている。

4.面倒な手段を講じなくても、比較的長い”日持ち(保存性)”が期待できる。
したがって、衛生的で安全性が高い。

5.品質向上、製品開発、製造技術、生産効率などに対するメーカーの努力により
品質が優れていると同時に、”値ごろ”であるため、消費者に根強く支持されている。

6.元来、日本人はめん食に対する嗜好性が極めて高く、その歴史も長い。
そのため、抵抗なく、食生活に受け入れられている。





 1970年代に入ると、インスタントラーメン市場が飽和し、売上の伸び率が
停滞します。そうした状況を打破したのが、1971(昭和46)年に発売された
初めてのカップめんでした。
発泡スチロール容器に入った味付けめんで、容器は包装材で、調理器であり、
食器になるなど、3つの機能を果たしています。

 カップめんを開発した安藤百福氏は、あるとき、インスタントラーメンを
アメリカで売るための会議の席上、アメリカ人が紙コップにラーメンを割って入れ、
フォークで食べてたのを見て、”外国の人に食べてもらうには、どんぶりと箸が
要らないものを作らなければいけない”と考えて思いついたのが、カップに
入っためんにお湯を注ぎ、フォークで食べるという「カップめん」でした。
 
 このカップめんは、日本人の食に対する価値観やライフスタイルの変化も
あって、若い世代を中心に消費者に受け入れられ、のちに袋めんと2大ジャンルを
形成するまでに成長しました。

さらに、容器がそのまま食器となり、フォークでも食べやすいことから、アジアの
箸や椀を使った食文化を超えて、インスタントラーメンが世界中に広まっていく
大きなきっかけともなりました。



ご当地ラーメンとミニラーメン

石油ショック以降、日本人の商品選択眼は一層厳しくなりました。
食生活の上でも、多様化、差別化、高級化、個食化の傾向が顕著になり、
そして流通の発達によって地方の名産品が食卓に並ぶ風景も一般的に
なってきました。

こうした時代の要請に対応したインスタントラーメンの最初の動きが、袋めんの
エリア化」、カップめんの「ミニ化」です。

エリア化」は、1979(昭和54)年に登場した、九州独特のとんこつ味に
仕立てた地域限定商品の袋めんがきっかけとなり、九州ラーメンが
次々発売され、九州市場は活況を呈しました。

これらのエリア限定商品は好評を背景に全国展開も開始し、ブームを
巻き起こしました。

 カップめんでは「ミニ化」が進行しました。
1980(昭和55)年、菓子メーカーが「おかしめん」として発売したのが始まりで、
その後、大手メーカーが自社商品のミニサイズを定番化していきました。

また、1982(昭和57)年にはわかめの入ったものがヒット商品となり、
カップめん全体の10.6%を占めるほどの売れ行きを見せています。


カップめんの誕生で具がクローズアップ

インスタントラーメンのおいしさは、基本的にはその種類に適しためん特有の
”こし”を中心とした食感と風味、スープの調和によって生まれますが、
おいしさの要素としては「目で食べる」ことも重要です。

一方、インスタントラーメンを主食として考えた場合、栄養素のバランスも
配慮し、種々の具材を加えることが大切であり、それは消費者のニーズでも
あります。これらの具材は「かやく」という表現で紹介します。

インスタントラーメンにおける「かやく」が特にクローズアップされるように
なったのは、昭和46年に開発された容器入りの「カップめん」の登場による
ところが大きく、それ以来乾燥具材産業も急速に成長してきました。



グルメを狙え!高級化戦略

 1980年の一般的な小売価格は、袋めんが70円、カップめん130円でした。
そこへ1食300円の高級カップめんが登場しました。翌年には、中身の充実を
図った高級インスタントラーメンも発売されました。
そして、1食120円の高級袋めんが発売されると、これが爆発的なヒット商品となり、
インスタントラーメンは安いものというイメージをくつがえすことになりました。

1982年、各メーカーとも高価格・高級インスタントラーメンを打ち出します。
このようにインスタントラーメン市場は高価格・高級商品の出現で活気を帯び、
一時は全市場の30~40%を高級インスタントラーメンが占めるほどでした。
また、カップめんでも高級路線を図った商品がでています。


健康志向の高まりの中で

 日本即席食品工業協会は、日本即席食品工業公正取引協議会を設立し、消費者の
健康志向の高まりと、製品に対する製造者責任の明確化の気運のなかで、消費者の
信頼を高めていくために、即席めん類の表示に関する公正取引規約を定めて、
エネルギー、たんぱく質、脂肪、炭水化物、食塩の5項目については表示を義務とし、
また、ビタミンB1、B2、カルシウムを強化した場合にはこの3項目について任意に
表示することとしました。


生タイプ即席めんの登場

 カップめんの生産量が袋めんが抜いた1989(平成元)年、カップ入りの
生タイプ即席めんが発売されました。

常温流通を可能にした生タイプめんは、久しぶりにめん市場に登場した
新しいタイプの商品でした。
1991(平成3)年には生タイプ即席めんで初の中華めんが発売になります。


ご当地ラーメンのめんとスープ


 即席めんの”風味”には、ローカル的な特徴を表現した多様な「ご当地ラーメン」や
「ご当店ラーメン」があります。
これらによって、特定の地域でしか味わえなかったものが、どこでも味わえるように
なりました。主なご当地ラーメンのめんとスープの特徴をまとめると、一般に、以下の
ようになります。


ご当地めんスープ
旭川ラーメン中細縮れしょうゆ
札幌ラーメン太縮れみそ
函館ラーメン中細
米沢ラーメン中細縮れしょうゆ
喜多方ラーメン極太しょうゆ
白河ラーメン中太縮れしょうゆ
佐野ラーメン平打ち縮れしょうゆ
東京ラーメン細縮れしょうゆ
横浜ラーメン極太ストレートとんこつしょうゆ
高山ラーメン細縮れしょうゆ
京都ラーメン中細ストレートしょうゆ
和歌山ラーメンストレートとんこつしょうゆ
尾道ラーメン中太平打ちしょうゆ
広島ラーメン中細ストレートとんこつしょうゆ
徳島ラーメン中細ストレートとんこつしょうゆ
博多ラーメン極細ストレートとんこつ
久留米ラーメン細めストレート濃厚とんこつ
熊本ラーメン中細ストレートとんこつ
鹿児島ラーメン細、太とんこつ